さまざまな障害をもつ方が参加する障害者スポーツ。笹川スポーツ財団では、「障害児・者の運動・スポーツの日常化」「共生社会の実現」に向けて、国内の障害者スポーツの現状や課題を調査データで読み解きます。
地域で障害者のスポーツ参加の受け皿を増やすには?障害者スポーツを行う施設の実態、障害者のスポーツ活動への参加状況などを調査。外部団体と共同研究も実施し、障害者が日常的にスポーツを楽しむための提言を行っています。
- 調査・研究
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さまざまな障害をもつ方が参加する障害者スポーツ。笹川スポーツ財団では、「障害児・者の運動・スポーツの日常化」「共生社会の実現」に向けて、国内の障害者スポーツの現状や課題を調査データで読み解きます。
地域で障害者のスポーツ参加の受け皿を増やすには?障害者スポーツを行う施設の実態、障害者のスポーツ活動への参加状況などを調査。外部団体と共同研究も実施し、障害者が日常的にスポーツを楽しむための提言を行っています。
2010年から、国内における障害者が専用・優先的に利用できる「障害者専用・優先スポーツ施設」を調査しています。施設数は、2010年:116、2012年:114、2015年:139、2018年:141と増加傾向にあり、2021年の最新調査では150施設で過去最多となりました。
しかし、国内の障害者数は、身体障害児・者は約436万人、知的障害児・者は約109万人、精神障害者は約419万人、合計約964万人となっています(内閣府「令和4年版 障害者白書」)。地域差はありますが、障害児・者がスポーツをする際、十分に対応できる環境が整備されていない現状は、大きな課題です。
障害者専用・優先スポーツ施設数の推移(2010年~2021年)
2012年度から2019年度までの、障害者専用・優先スポーツ施設の利用状況をみると、総利用者数は700~800万人、障害者の利用者数は250万人前後で推移。新型コロナウイルスの影響を受けた2020年度は、総利用者数が370万人、障害者の利用者数は98万人と、いずれも半減しています。
2019年度から2020年度の利用者数の減少率においては、総利用者数では-54.1%、障害者の利用者数では-59.2%。重複障害は-80.3%でした。重症化リスクの高い障害者が施設利用を敬遠し、結果として、複数の障害を抱える重複障害者が利用を控えたと推察できます。
障害者専用・優先スポーツ施設における種目別スポーツ大会やイベントの実施内容について調査しました。「 ボッチャ」 が 68.1% と最も多く、ついで、「卓球」(58.3%)、「水泳」(33.3%)、「アーチェリー」(23.6%)でした。2018 年度調査と比較すると、東京2020パラリンピックで注目を集めた「ボッチャ」を実施する施設が大きく増加した一方で、「卓球」 「水泳」 「アーチェリー」など多くの種目で減少しています。
障害者専用・優先スポーツ施設における人気の種目別スポーツ大会やイベント
障害者専用・優先スポーツ施設における巡回スポーツ教室(出張教室)の実施内容についてみると、2018年度調査と比べると増加しています。実施内容では「多種目の体験型教室」は76.9%、「種目別スポーツ教室」は74.4%だったと70%以上でした。重度障害者の参加状況をみると、「多種目の体験型教室」「種目別スポーツ教室」ともに、2018年度調査よりも減少しています。
障害者専用・優先スポーツ施設における巡回スポーツ教室(出張教室)
笹川スポーツ財団では、長年実施してきた障害者スポーツ環境の調査・研究を経て、外部団体と共同実践研究を行い、その結果から障害者スポーツ環境の充実、障害児・者のスポーツの日常化に向けた政策提言を行っています。
2017年に政策提言を発表しました。障害者がスポーツに参加しやすい社会をつくるためには、地域の障害者スポーツ協会を中核とし、「医療」「リハビリテーション」「学校教育」「福祉」の各分野で連携・協働することが、障害者がスポーツに接する機会を創出することにつながるという内容です。その実現に向け、大分県障がい者スポーツ協会と共同実践研究として、障害者のスポーツ環境充実に向けさまざまな事業を展開しました(2018年~2020年)。
大分県障がい者スポーツ協会との共同実践研究を経て、2021年に政策提言を発表しました。地域の障害者スポーツ協会にコーディネーターを配置し、「地域スポーツと障害者団体・福祉・就労による場の創出」「特別支援学校を拠点とした地域の場の創出」をしていくべき、という提言です。
コーディネーターの配置による福祉、教育、スポーツ関係者の連携体制の構築
これまでの「障害者専用・優先スポーツ施設」研究から、障害者が日常生活で気軽に運動・スポーツを楽しめる場所が整備されていない現状をどう解消するのか?施設を新しく建てるのは現実的ではありません。障害児・者が、いつでもどこでもスポーツできる環境を整えるために、地域の障害者スポーツセンターなどの障害者専用・優先スポーツ施設が拠点となり、近隣の公共スポーツ施設とネットワーク化を進め、障害者のスポーツ参加の受け皿を増やすことを提言しています。
▼ハブ施設:都道府県単位で障害者スポーツの拠点(ハブ)として機能する障害者スポーツセンター
▼サテライト施設:地域の障害者専用・優先スポーツ施設や公共スポーツ施設
▼地域のその他社会資源:ハブ・サテライト施設以外で、公民館や福祉施設など障害者のスポーツの場となる施設
障害者が身近な地域で運動・スポーツに親しめる環境を整備するための効果的な施策や取り組みを検討するために、東京都障害者スポーツ協会と共同研究を実施。東京都障害者総合スポーツセンターと東京都多摩障害者スポーツセンター、その周辺自治体の施設(公共スポーツ施設や多機能型施設、公民館等)を対象とし、地域の障害者スポーツの拠点となる障害者スポーツセンター、および障害者優先スポーツ施設や一般の公共スポーツ施設等の機能・役割を明らかにしました。
東京パラリンピックでのアスリートの活躍により、障害者スポーツに対して多くの注目が集まりました。この盛り上がりを、障害者の生涯スポーツ振興、障害者スポーツの日常化につなげるには、どうすべきかを考えるセミナーを開催し、600名超える方々に参加いただきました。
文部科学省『健常者と障害者のスポーツ・レクリエーション活動連携推進事業(地域における障害者のスポーツ・レクリエーション活動に関する調査研究)』報告書の調査結果について、自治体の障がい者スポーツ協会関係者などを対象に、概要を説明しました。※終了事業
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